「クラインの壷」, HDD クラッシュの恐怖
「クラインの壷」
ヴァーチャルリアリティ装置をテーマにしたミステリー。岡嶋二人さん名義の最後の小説なんだそう。
ずっと以前、出張のために一人で飛行機に乗らなければいけないことがあって、暇つぶしに空港の売店でこの本を買ったのでした。当時岡嶋二人さんも (もちろん井上夢人さんも) 全然知らなくて、「クラインの壷」というタイトルに惹かれて買ったのですが、思いのほか面白くて得した気分になったっけ。つまり今回は再読。その後井上さんの「99人の最終電車」に高校の時の先輩がかかわっていることが分かったり1、「岡嶋二人作品」の中では三本の指に入るくらいの人気作だったらしいこと、NHK ジュニアドラマとしてドラマ化されているらしいことなどを知って2、面白いめぐりあわせだったなぁと思いました。
VR モノとしては最近ではよくある展開の話と言えるのかもしれませんが、小説として厳選されたパーツを組み合わせ、切れ味鋭いお話になっているように思います。ダークなエンディングもなかなか。それにしても「携帯以前」の現代小説って今ではすっかり古びてしまいましたねぇ。このお話でも、主人公が奮発して「留守電機能付きインテリジェント・テレフォン」を買う、というような描写があって、確かに10年前くらいではそれがごく普通のことだったのに、妙な違和感を感じたりしました。
HDD クラッシュの恐怖
HDD が一般的に使われるようになって既に10年以上経つわけですが、HDD クラッシュでデータを失う人が現実に多数いるにもかかわらず、コンシューマレベルでのソリューションは一向に提供される気配がありません。エンタープライズ分野ではもちろん RAID その他いろいろソリューションあるわけですけれども、個人 PC におけるクラッシュの被害がそれらに対して相対的に小さい=ニーズがないとは思えないんですよね。HDD クラッシュという、「起きるか起こらないか分からない」モノに対してかけるコストというものが、個人レベルでは見積りにくいというのが主な理由なのかしら。
そういう意味では、これまでは RAID やレプリケーションなど「守るべきものをコストをかけて守る」という話しかなかったわけですが、現在では個人レベルでも iPod やハイブリッドレコーダなど、いくつもの HDD を所有しているわけで、それらの間で自動的にデータを重要度に応じて冗長化して保持するなどして、「機器は故障しても大事なデータは絶対に消えない」というようなうまい仕組みを作ったら結構訴求力あると思うんだけどなぁ3。
HDD クラッシュに戦戦兢兢として日々過ごすのはもう止めたいっす…。